夜風のような君に恋をした
バイバイ、またね。

次も来てね。

そんなありふれた常套句は、死にたがりをこじらせている私たちには必要ない。

“死にたがりこじらせ部”なんて提案は気まぐれで、彼にもうこれきり、会うことなどないかもしれない。明日は、どちらかが死んでるかもしれない。

そんないつ終わるかもしれない、希薄な関係だからだ。

階段を降り切ったところで立ち止まり、彼のいる方向を見上げる。

いつの間に帰ってしまったのか、青い道路標識を掲げたその白い高架に、もう彼の姿はなかった。
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