夜風のような君に恋をした
翌朝。

爽やかな挨拶が行き交う一方で、どことなく重苦しさの漂う、いつもの朝の教室の。

教科書やノートを取り出し、一時間目の英語の授業の準備をしていた私のところに、学生鞄を手にしたままの芽衣がやってきた。

「雨月ちゃん、聞いて! 彼氏から返事が来たんだよ。なんか家族のことでゴタゴタしてて、ゆっくりメッセージ打てなかったみたい!」

私はいつも通り、学校用の笑顔を向ける。

「そうなんだ! よかったね」

「そうなの~。ホッとした~!」

泣き顔に似た笑顔を見せながら、芽衣はそのまま、私の席に無理矢理座ってくる。

ひとつの椅子にふたりで座るにはそれなりの配分を考えないといけないから、私は何も言わずに、お尻を少しずらしてあげる。

「そうだ、これ。買ったの!」

そう言って芽衣が掲げて見せてきたのは、学生鞄につけている、流行りのふわふわ熊のキーホルダーだった。ちょうど芽衣の掌ぐらいの大きさで、キーホルダーとしてはかなり大きい。

「そして、じゃーん。これ、雨月ちゃんにプレゼント!」

そう言って芽衣が鞄から取り出したのは、芽衣のと色違いのふわふわ熊のキーホルダー。

サプライズプレゼントに、私は驚き目を瞠った。
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