夜風のような君に恋をした
「お金はいいの! 雨月ちゃん、夏休みに誕生日だったでしょ? 誕生日プレゼントだと思って」

結局私は芽衣の押しに負け、ふわふわ熊のキーホルダーをプレゼントされることになる。

「ありがとう、大事にするね」

「貸して。鞄につけてあげる」

私の学生鞄に提げられた、芽衣のとおそろいのふわふわ熊のキーホルダー。

おそろいって、なんて気持ち悪い言葉なんだろう。

自分の体の一部を、芽衣に支配されたみたいで落ち着かない。

しがらみがまたひとつ増えて、自由を阻害されてしまったとしか思えない。

それなのに。

「雨月ちゃんとおそろだー。わーい、うれしいー」

芽衣は心からうれしそうにニコニコしていて、やっぱり私と彼女は合っていないんだと実感する。

悪いのは芽衣じゃない、きっと私。

みんなと一緒っていうのは、安心する現象で、普通の感覚なんだろう。

自分が欠落品みたいに思えて、また息が苦しくなってくる。

そしてどういうわけか、夜の高架で会う、死にたがりをこじらせている彼に無性に会いたくなった。
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