夜風のような君に恋をした
 “死にたがりこじらせ部”を発足してから、私は塾のある日は必ず、あの高架で冬夜と会うようになった。

私たちが互いに伝え合う“その日あったいい出来事”は本当に些細なことだった。

――『今日はいい天気だった』

――『お弁当にエビフライが入ってた』

――『壊れたと思ったシャーペンが治った』

――『髪の跳ね具合がいいかんじだった』

くだらない、どうでもいいような、日常のことばかり。

だけど普段は絶対に口にしないそういったことを、言葉にして耳にするだけで、息が詰まりそうな毎日が少しだけいいものに思えてくるから不思議だった。
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