夜風のような君に恋をした
二章 夜の温もり
窓から降り注ぐ爽やかな朝の光とは裏腹な、うだるような空気の、いつもの電車内。

いつもの車両に乗ると、ドア付近に一輝がいて、ニカッと笑顔を向けてきた。

「おはよ、市ヶ谷」

「おはよう」

茶色い短髪に、俺よりもほんの少し高い身長。

サッカー部の一輝は、夏休み中も練習に勤しんでいたらしく、こんがりと日焼けしている。

「あ~、一時間目の数学の小テスト、マジやばい。何もやってねえ。どうせお前はいつものようにばっちりなんだろな」

「うん。まあ、だいたいいけそうかな」

いつものように、笑って一輝の話を受け流す。

「お前はサッカー部だから、勉強の時間ないし、できなくてしょうがないよ。その点俺は暇だからさ」

「たとえゆるい部活でも、俺はお前みたいにいい点ばっかりとる自信、ないけどな。それにしても、お前は今日も爽やかだな~」

そう言って目を細め、俺に羨望の眼差しを向けてくる一輝。

一輝とは、中学からの仲だ。

中学のとき、近くの学校にサッカー部がないという理由で、一輝は校区外から通っていた。

だから一輝と俺の家はそこそこ離れていて、電車に乗る駅も違う。

思えば一輝は、出会った頃から、俺にこんな目を向けてきた。
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