夜風のような君に恋をした
同じような日々を繰り返しているようでも、世界は確実に動いているようだ。
そして今日は、また塾のある日。
塾なんて、本当は嫌いだ。
成績順のクラス分け、追い抜かれる焦燥感、勉強という重責にがんじがらめにされる息苦しさ。
成績が落ちたらお母さんがまた落ち込むんじゃないかという恐れから、追い立てられるようにして必死に勉強をするだけの時間。好きになれるわけがない。
だけど冬夜と出会ってから、塾のある日は、少しだけ心が弾むようになった。
昼休憩。
授業が終わり、どっと開放的な空気になった教室。
お弁当袋を手にした芽衣が、今日も私の席にやってきた。
「お腹空いた~。雨月ちゃん、早く食べよ!」
「うん。そうしよう」
キャラメル色のふんわりボブヘアを揺らしながら、前の席の椅子を引き寄せ、芽衣が座る。
いつ見ても、ちっちゃくて、綿あめみたいにふわふわなかわいい女の子だ。
百六十センチあって、大人っぽいとばかり言われる私とは何もかもが違う。
「今日はサンドイッチなんだ!」
そう言いながら、芽衣はふわふわ熊キャラが描かれたお弁当袋を机の上に置く。
それから思い出したように「あ、そうだ!」とキンと声を響かせた。
「雨月ちゃん、この間の話、覚えてる?」
「この間の話?」
芽衣はいつも一方的にいろいろな話を聞かせてくるから、何のことを指しているのかわからず、首を捻った。
「彼氏の友達を紹介するって話だよ」
「あ……」
思い出した。
断り切れず、いいよって言ってしまったやつ。
そして今日は、また塾のある日。
塾なんて、本当は嫌いだ。
成績順のクラス分け、追い抜かれる焦燥感、勉強という重責にがんじがらめにされる息苦しさ。
成績が落ちたらお母さんがまた落ち込むんじゃないかという恐れから、追い立てられるようにして必死に勉強をするだけの時間。好きになれるわけがない。
だけど冬夜と出会ってから、塾のある日は、少しだけ心が弾むようになった。
昼休憩。
授業が終わり、どっと開放的な空気になった教室。
お弁当袋を手にした芽衣が、今日も私の席にやってきた。
「お腹空いた~。雨月ちゃん、早く食べよ!」
「うん。そうしよう」
キャラメル色のふんわりボブヘアを揺らしながら、前の席の椅子を引き寄せ、芽衣が座る。
いつ見ても、ちっちゃくて、綿あめみたいにふわふわなかわいい女の子だ。
百六十センチあって、大人っぽいとばかり言われる私とは何もかもが違う。
「今日はサンドイッチなんだ!」
そう言いながら、芽衣はふわふわ熊キャラが描かれたお弁当袋を机の上に置く。
それから思い出したように「あ、そうだ!」とキンと声を響かせた。
「雨月ちゃん、この間の話、覚えてる?」
「この間の話?」
芽衣はいつも一方的にいろいろな話を聞かせてくるから、何のことを指しているのかわからず、首を捻った。
「彼氏の友達を紹介するって話だよ」
「あ……」
思い出した。
断り切れず、いいよって言ってしまったやつ。