朝の陽射しを見つめて
私も前に向き直して空を見あげてみると、薄く三日月が光っていた。きれいだと思った。
この感動を誰かと共有したいと思ってまた後ろを見るとその人はゆらゆらと不安定に見えた。‥落ちる!
「危ない!」
思わず声が出てしまった。
さっきまで私に気付いてもなさそうだったその人ははっきりと私を見た、多分。
少し沈黙が流れる。
気まずい空気に耐えきれずもう一度声をかけた。
「あの、大丈夫ですか?」
その人は私の呼びかけに答えずまた空を見上げた。
「危ないから下りたほうがいいんじゃないですか。」
うざいだろうなと思いつつなんとく気に掛かった。あと正直なところ、無視されるのは好きじゃない。
もう一度私の方を見たその人は少し間をおいてから計算されたような笑顔で私に笑いかけた。
その笑顔を見てこの人はいわゆるかっこいい人だと思った。