ホオズキ
無性に、星が見たくなった。
何かあったわけでもない、
何か無かったわけでもない。
ただほんの小さな小さな石が
コツンと音を立てただけだ。
その音が私をここに赴かせたのだ。
人のいない山奥のちょっと開けた所。
そこに私は立っていた。
周りには何もなく、
私だけが知っているかのようなこの場所に
砂利を踏む音と車のエンジン音しかない。
風がそれを空に運んでいる。
無数に、星が輝いていた。
街中では目立った数個の星しか見えない。
それすらも見えない所もある。
ここは、比にならないほど大小様々な星で溢れかえっていた。
ふと、冷たい星が降ってきて、私を濡らしていった。
ザーザーと音を立てて星は地面を濡らしていった。
私を慰めるかのように身体を濡らしていった。
子供は朝に嘘をつく。
大人は夜に嘘をつく。
星が私を包んでくれた。
凍えそうな星降る夜に。
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