気づけば君が近くにいてくれた
咄嗟に手で押さえて隠したけれど、すぐに反応できなかった。
予想しようとすればできたはずなのに、動けなかった。
多分、いや絶対に、見られてしまった。
香純ちゃんと藤波くんのことを見るのが怖い。
この火傷跡を見てどう思った?
可哀想?
あわれ?
怖くて、不安で、2人とは反対側に顔を背けた。
そこで目が合ったのは、ついさっき斜め前の席で盛り上がっていたおばさんの1人。
まっすぐにこちらを見ている。
いや、1人だけじゃない。
そこにいた4人全員だ。
「あの子の頬の火傷跡、痛そうねぇ」
「何があったのかしら」
「最近よくあるあれじゃない?虐待とか……可哀想にねぇ」
体が、心が凍りついた。
おばさんたちの話し声。
私のことだ。
嫌だった出来事がフラッシュバックする。
嫌だ。
何も聞きたくない。
気持ち悪い。
怖い。
手が、足が、肩が……全身が震える。
違う。そうじゃないのに。