気づけば君が近くにいてくれた
「実桜ちゃん……」
「片寄さん、大丈夫?」
「……ごめん、今日は帰る」
ちゃんと私は声を出せていただろうか。
香純ちゃんと藤波くんがとても心配そうな目を向けているのが伝わってくる。
「実桜ちゃ……」
「やめてっ」
「……っ」
背中をさすって落ち着かせようとしてくれた優しい香純ちゃんの手を振り払う。
私は、酷い人だ。
チラッと見えた香純ちゃんの目は、驚いているのと同時に悲しそうだった。
「待って、家まで送るよ、片寄さん」
「家には1人で帰るから」
藤波くんの差し伸ばしてくれた手さえも振り払ってしまう。
今は、1人になりたかった。
ごめんなさい。
せっかく私を誘ってくれたのに。
連れ出してくれたのに。
私に勇気をくれたのに。
私は、引き止める香純ちゃんと藤波くんを置いて、カフェを飛び出した。