気づけば君が近くにいてくれた



「それが、これ」



どんな反応をされるのか、怖くて2人の顔を見ることができない。



「触ってもいい?」


「……え?」



そう言われるのは初めてだった。


いつも“わぁ、痛そう”とか“可哀想”とかそういう言葉ばかりしか掛けられてこなかったから。


私はコクンと頷いた。


綺麗な手で火傷跡をなぞられる。


とても優しくて、なんだかくすぐったい。



「これが実桜ちゃんの生きてる証だね」



香純ちゃんは、目を泣き腫らしながらもふわりと優しく微笑む。


この火傷跡が“私の生きている証”。


そんなこと、初めて言われた。



「実桜ちゃんのご両親のことは本当に悲しいけど……実桜ちゃんが生きててくれて本当に良かった。こうして出会って友達になれて本当に、本当に良かったよっ」



ギューッと今までにないくらい固く、優しく抱きしめてくれた。



「ほらっ、藤波くんもなにか言いなよっ」



涙でぐしゃぐしゃになりながらも藤波くんに話を振る香純ちゃん。


その声に合わせて藤波くんの顔を見て、初めて藤波くんも涙を流してくれているのがわかった。




< 121 / 195 >

この作品をシェア

pagetop