気づけば君が近くにいてくれた
他人の目を気にすることが疲れた。
もう、何も聞きたくない。
誰とも関わりたくない。
その頃は、どんなに雲がなくて晴天の朝が来ても、ずっと真っ暗な空間に1人でいるようだった。
私には何も無い。
残っていたのは、弱い心と悲しい過去と左頬の火傷跡だけ。
1人でいる方が楽だった。
何も気にしなくていい。
「それで不登校になっちゃったんだ。私は……現実から逃げちゃったの」
「そっか。頑張りすぎるといつか疲れちゃうから、逃げて休むことも大事だよ。逃げることが悪いことじゃないんだから。片寄さんは、間違ってなんかいないよ」
「うん、藤波くんの言う通りだよ。でもそんな時に実桜ちゃんに寄り添えるように、もっと早く出会えてたら良かったのにな」
自分で不登校になったけれど、それはずっと悪いことだと思っていた。
普通は学校に行って勉強して、進学して、就職して……
順調に教科書に載るような見本となる生き方が正しいと思ってた。
逃げることは悪いことじゃない。
間違ってなんかいない。
そう言ってもらえて、ずっとモヤモヤしていた心が救われた気分だった。