気づけば君が近くにいてくれた
「どうしてもやりたいことがあって……」
申し訳なさそうなのと不安とどこか期待が入り交じった声。
香純ちゃんがそこまで言うのなら。
私は二つ返事でオッケーを出した。
「ありがとう実桜ちゃん!じゃあお家で待ってて!」
直接見ることはできないけれど、電話の向こうでキラキラとした笑顔を浮かべているのがわかる。
それから私が返事をする前に電話は切れてしまった。
そっか、これから香純ちゃんが家に来てくれるのか。
ゆっくり体を起こしてベッド脇に座り込む。
そして、ハッとする。
香純ちゃんが来るなら早く身支度しておかなきゃ。
さすがに寝癖のついたボサボサ髪かつよれよれな着古したパジャマ姿で出迎えるわけにはいかない。
これから家を出て向かってくるとしても、香純ちゃんの家の場所を知らない私は、どのくらい時間がかかるのかわからなかった。
急いで部屋を出て洗面所に行き、顔を洗って、大きな鏡を見ながら髪をとかしてセットする。
「うん、これで恥ずかしくないかな……」
多分変な寝癖はなくなったと思う。