気づけば君が近くにいてくれた
私の前に香純ちゃんが座って、持ってきていたカバンからゴソゴソと何やら取り出して、テーブルの上に並べていく。
「これって、メイク道具?」
並べられているのは、化粧下地にファンデーション。
マスカラ、チーク、リップなどなど。
普段家から出ることもほぼなく、興味もあまりなかった私の部屋にはないものだけれど、これが何をするものなのかはわかる。
「うんっ!これから実桜ちゃんをもっと可愛く変身させちゃおうと思って!」
「……うん?」
ますますわけがわからなくなってしまった。
メイクってオシャレをする時にするものじゃないの?
決してジャージを着ている時にするようなものではないと思っていたんだけど……
「はい、目つぶっててねー」
香純ちゃんに言われるがまま、目をつぶってじっとする。
顔にトロッとしたクリームを塗られているのを感じる。
丁寧に塗ってくれる香純ちゃんの指がなんだかくすぐったい。
「きっと実桜ちゃんはナチュラルな方が似合うから薄くしておくね!ちょっとこっち側だけ念入りにするよ?」
そう言って香純ちゃんが触れたのは、コンプレックスがある左頬。
一体何をするというんだろう。