気づけば君が近くにいてくれた
ベースは一通り終わったみたいで、小さなパーツへと移っていく。
「あっ、実桜ちゃん動いちゃダメだよ」
「ちょ、ちょっと怖くて……」
「我慢ガマン!」
粘膜ギリギリを引くアイラインやマスカラは、目を開いていてというものだから、中に入ってしまうんじゃないかとハラハラドキドキで、何度も瞬きをしてしまいそうになった。
メイクをされている間は、一切鏡を見せてくれず、今私がどんな顔をしているのかわからない。
まさか、これは何かの罰ゲームで余興か何かに出るような変なメイクをされている……なんてことないよね?
1度そんなことを考えてしまうと、気になって仕方がなくなる。
「香純ちゃん、今どうなって……」
「あともう少しだから!すっごく可愛くなってるよ!」
ほ、本当かな……?
香純ちゃんが嘘をつくことはないと思うんだけれど。
やっぱり不安は不安だ。
「うん!よし、できたっ!」
私の顔を満足そうに覗き込んで微笑む香純ちゃんがそう言ったのは、メイクを始めてから20分ほど経ってからだった。