気づけば君が近くにいてくれた
藤波くんがコーナーを回ってきて、直進に入った。
足の速い藤波くんのおかげで、あまりなかったはずの3位との差が大きく開いている。
これなら私もなんとか繋げるかもしれない。
「片寄さん!走って!」
藤波くんの声が聞こえる。
私は藤波くんを信じて、前を見て走り出した。
左の手のひらを後ろへ伸ばす。
パシッと音を立てて手のひらに置かれたバトン。
「大丈夫、みんながついてるよ」
顔は見えない……けれど、確かに聞こえた藤波くんの言葉。
みんながついてる。
このバトンには、今まで走ってきてくれたクラスメイト全員の気持ちがこもってる。
私も繋げないと。
トラックの反対側で待っている香純ちゃんに。
放送部のアナウンスで、3位のクラスが私のすぐ後ろまで迫ってきていることがわかる。
それでも後ろは振り返らない。
だって、目の前で香純ちゃんが手を振って待ってくれているから。
「実桜ちゃん!もう少し!」