気づけば君が近くにいてくれた
「あっ、もしかして風邪で声が出ないとか……ごめんね、全然気がつかなくて!」
私のマスクを見て、ハッとする香純ちゃん。
マスクの理由は、風邪ではない。
ただ火傷跡を隠したいだけ。
無意識に左頬へと伸びていた手に気づき、すぐに引っ込めた。
「えっと、片寄 実桜ちゃん?」
あらかじめ貰っていたクラス名簿を見て私の名前を確認していた。
クラスの席は出席番号順。
香純ちゃんとは席が前後だから、名簿を見ればすぐに名前はわかる。
無視をするわけにはいかず、ゆっくりと頷いた。
「実桜ちゃんって可愛い名前だね!肌も白いし、前髪もあげたらもっと可愛いよ!ほらっ……」
「やめて!!」
「……み、おうちゃん?」
香純ちゃんの手を振り払ってしまった。
目を大きく見開いて驚く香純ちゃんを見て、今自分がやってしまったことに激しく後悔をする。
ぶつかり合った手がジンジンと痛む。