気づけば君が近くにいてくれた
Epilogue*
「明日からテストじゃん」
教室の中だけじゃなく、廊下にまで溢れかえっているテストの話題。
うん、私もテスト勉強はあんまり好きじゃない。
歩いていると聞こえてきた会話に、心の中で大きく頷く。
だって範囲が広くてどこから手をつけたらいいのかわからないから。
先生は、授業中にテストに出るところのヒントを出していると言うけれど、色のついたチョークで書かれていたところ全てが出題されるわけじゃないでしょ?
それに、その大事だという言葉だけでもたくさんありすぎて覚えるのが大変だ。
それでも、大変だというこんな日々が、私には幸せに感じる。
ちょうど登校のピーク時間で、生徒玄関にはたくさんの人がいた。
久しぶりに学校に来た時には、自分の下駄箱の場所さえも覚えていなかったけれど、もうばっちり覚えている。
「もうテスト勉強嫌すぎるよ……あっ、実桜ちゃんおはよう!」
「よう、片寄!」
私がローファーから上履きに履き替え、下駄箱にしまおうとしたと同時に目が合った、体育祭の綱引きでハイタッチを交わした男の子と仲良しの女の子に声をかけられた。
「咲ちゃん、佐々木くん、おはよう」
咲ちゃんは、この前の理科の実験の時に同じグループだった。
中学校にまともに通えていなかった私は、実験に使う器具に触るのはほぼ初めてで、咲ちゃんが隣で優しく教えてくれた。