気づけば君が近くにいてくれた
そうだ、お母さんとお父さんは無事だろうか。
時計なんて見る余裕はなかったけれど、外は真っ暗だからまだ夜中だということはわかった。
この時間であれば2人も寝室で寝ていたはず。
不安で、怖くて、心配で。
熱くてたまらないはずなのに、体がガタガタと震える。
早く2人のところに行かなければ。
無事なのか確かめに行くためにドアを開けた。
学校の避難訓練では、絶対に戻っては行けないと教えてもらった。
そんなことはもう、私の頭からは消えていた。
「熱っ、痛いっ!」
ドアが開いたことで、空気が一気に混ざり、炎が爆発した。
その勢いで木の太い柱がガタッと崩れ落ちる。
危ない……!
そう思ったときには既に上から柱が、私に向かって落ちてきていた。
炎に包まれた木片が飛んできて、私の左頬に当たった。
「うっ」
顔が焼けていくのがわかる。
私の体の上に乗った木の柱が重くて、立ち上がれない。
そうこうしているうちに、たちまち部屋の中は煙でいっぱいになった。
空気が熱い。肺が焼ける。
皮膚が痛い。体が燃える。
「逃げろ、実桜!」
「……おとう、さん?お父さんっ!!」
微かにだけれど、燃え上がる火の向こう側から私の名前を呼ぶ声が聞こえた。
お父さんは、まだ生きてる。
でも、ダメ。
逃げられないの。
身動きが、とれないの。