気づけば君が近くにいてくれた



この家では珍しく家のチャイムが鳴った。


確かに昼間は郵便だったり、ご近所さんだったりが訪ねてくるけれど、それもたまにの話。


しかも今日は夕方の来訪者だから、郵便屋さんだろうか?


下で昭子おばあちゃんが玄関のドアを開ける音がする。



「あらまあ、こんにちは」



何やら明るい声で、郵便屋さんへの対応とは違う気がする。


まるで仲良しのご近所さんが来て、立ち話をしているような。


でもこんな時間にご近所さんが来るなんて本当に珍しい。


だいたいは午前中か、午後一番のはずなのに。



「実桜ちゃん、お友達が来てくれたよ」


「……え?」



意味がわからない。


昭子おばあちゃんは階段を登ってきたかと思えば、そんなことを言い始めた。


お友達?


私には友達なんて人いないのに。


何かの間違いじゃないの?



「実桜ちゃんに新しい友達ができてたなんて、本当に嬉しいわ」



ドアの向こうで嬉しそうにする昭子おばあちゃんになんて言おうか。


きっと私を訪ねてきた人たちは本当に友達じゃない。


だってそんな人いないんだから。


でも見ていなくても声だけで、昭子おばあちゃんが笑顔を浮かべているのがわかって、何も言えなくなる。






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