気づけば君が近くにいてくれた
しばらく開いていなかったスクールバッグを自分の横に持ってきて、中から筆箱を取り出す。
これに触れるのも本当に久しぶり。
教科書なんかは、入学式の日にカバンに詰め込んだきり、一度も取り出していなかった。
折り目が付き始めている小崎さんと藤波くんの教科書とは違い、折り目1つない綺麗な私の教科書。
「まず数学から始めようか。片寄さん、この前渡した宿題のプリント持ってる?」
「うん、向こうに」
結局まだ見ていなかったプリントの束。
立ち上がってファイルごと持ってくる。
えっと、数学のプリント……は、あった。
ペラペラとめくっていくと、半分に折られたB4サイズのプリントが3枚も出てきた。
え、これが1回の宿題の量?
さすが高校。
しかも一応進学校だったはずだから、勉強にも力が入っているのかもしれない。
「そうそう、それ!そのプリントからやってみよう。教科書は5ページからね。小崎さんもわかんないところあったら言って?」
「オッケー!」
制服の袖をまくり上げて、やる気満々の小崎さん。
かと思えば、私に耳打ちしてきて。
「結構頼りになるでしょ、藤波くん」
確かに、しっかり者で頼りになる。
まだ藤波くんがどんな人なのかなんて全然わからないけれど、小崎さんの言う通りな気がしてこくんと頷いた。