気づけば君が近くにいてくれた
勉強会を始めてから、しばらく無言の時間が続く。
聞こえるのは、部屋にある時計の秒針の音と、シャープペンシルを動かす音。
ササッとテンポよくシャープペンシルの音が鳴っているのは藤波くん。
反対に小崎さんはなかなか進んでいないようで、定期的に手が止まっている。
そのまま止まっていると、すかさず藤波くんが小崎さんに声をかけて解き方を教えてあげていた。
優しいんだな、藤波くん。
こんな優しくされたら、好きになっちゃうのがお決まりの恋愛漫画だよね。
……って、また私は漫画の読みすぎだ。
でも、本当にそう。
なんか、2人ってお似合いな気がする。
「あれ、片寄さんもわからないところあった?」
私が顔を上げて2人の方を見ていたからか、藤波くんと目が合ってしまい、そう言われてしまった。
私はすぐに首を横に振った。
まだ教科書の最初の方だからか、例題を見れば解ける問題がほとんどで、今のところ全部理解できている。
「すごいね、実桜ちゃん!実はめっちゃ頭良いんでしょ?」
全ての問題を順調に解けている私の宿題プリントを見て、小崎さんが尊敬の眼差しを私に向ける。
「そんな、ここは簡単だから……」
「えぇ、私、最初から苦戦してたのに!」
うん……それはそれで小崎さんが心配だ。
小崎さんは、あまり勉強が得意ではないのかもしれない。