気づけば君が近くにいてくれた
「私ね、小崎さんじゃなくて、実桜ちゃんには香純って呼んで欲しいなっ」
「へ?」
もっとなんだろう……難しいことをお願いされるのかと思っていた。
極端に言えば、明日から一緒に学校へ行って欲しいとかそういう難しいこと。
だから、名前で呼んで欲しいと言われたことに拍子抜けしてしまった。
「ダメ、かな?」
小崎さんのお願いの仕方はずるい。
私は小崎さんの笑顔に弱いらしい。
やっぱり無理なんて言えなくて、静かに頷いた。
「やったーっ!うわん、どうしよう、嬉しい!!」
「わあっ!?」
とびっきりの笑顔で飛びついてきて、その反動で後ろに倒れ込んでしまう。
「ありがとう、実桜ちゃん!」
まさか、名前で呼ぶことを約束しただけで、そんなに喜んでくれるとは思っていなかった。
「おざ……か、香純ちゃん、苦しいっ」
「あっ、ごめんね!?大丈夫?本当に嬉しすぎてつい舞い上がっちゃった……って、今呼んでくれたよね!?ねぇ、もう1回抱きしめてもいい?」
突然名前で呼ぶのは、ちょっぴり気恥しい。
それでも喜んでくれる香純ちゃんを見ていると、名前で呼んでよかったと嬉しくなった。