気づけば君が近くにいてくれた
今でも鮮明に覚えているニュース。
夜が明けてもずっと信じられなかった。
朝、いつもは時刻を確認するくらいで興味のなかったニュースに跡形もなくなった自宅の映像とお母さんとお父さんの名前が読み上げられ、目の前で愕然としていた。
あの出来事は実際にあったことだったんだと、残酷な現実を突きつけられた。
「実桜ちゃん、そろそろ時間だよ」
「あ……うん」
高校1年生、春。
まだシワひとつない制服に袖を通して、テレビの前に立ち尽くしていた。
───昨夜、都内の閑静な住宅街で火災が発生しました。
今日もどこかで火事があったらしい。
あの日と同じようなニュースを目にする度に、心臓がギュッと掴まれたように苦しくなる。
被害に遭った人は大丈夫だろうか。
そんな心配もあるけれど、あの出来事がつい昨日のことのようにフラッシュバックしてくるのがとても辛い。
「本当に1人で大丈夫かい?」
そんなに酷い顔をしていたのか、横から声をかけられた。