気づけば君が近くにいてくれた
電車を降りると、同じ駅で降りた人たちが同じ方向へとゾロゾロ歩いていく。
コンサートホールへは何度も足を運んでいるから迷うことはないけれど、これだけ同じ方向に行く人がいれば初めて来た人も迷わないだろう。
それにしても、若い人増えたよなぁ。
ずっと親世代が多かったけれど、最近は私とあまり年齢の変わらないファンの人も増えて来ていると、ライブ会場に来ている人を見て思った。
去年、有名な人気イケメンアイドルが主演の映画の主題歌を担当していたから同世代のファンが増えたのかも。
そんなことを考えながら歩いていると、無事に会場へとたどり着いた。
「……っ」
思ったよりも人が多い。
なるべく人との関わりを減らそうと、グッズの購入を含め、開演時間ギリギリに着くように計算して家を出てきたはずなのに、グッズ購入の列はかなり長くなっていた。
時間には間に合うと思うけど……
なんだか不安になって、マスクを目が隠れないギリギリの高さまで上げて、顔が隠れるようにずっと下を向いていた。