気づけば君が近くにいてくれた
ふと無意識に触れてしまう左頬。
あの事件の時にできた火傷跡が左頬に残っている。
成長して、どんなに背が伸びても、顔が大人びてきても、この火傷跡だけは消えてはくれなかった。
この火傷跡は、あの事件が起こった紛れもない証拠。
あの日の出来事は本当は嘘で、長い悪夢を見ているだけなんじゃないかと思うこともあるけれど、毎朝自分の顔を鏡越しで見る度に、夢じゃないと鏡の中の私に言われる。
これは、私にとっては呪いのようなもの。
このせいで、私の生活はガラリと変わった。
「実桜、大丈夫?」
少しだけ家のことが落ち着いて、久しぶりに小学校に登校した日、クラスのみんなが私のことを心配してくれた。
元はそこそこ明るい性格で、友達も少なくはなかった。
「あははっ、大丈夫だよ?ちょっとだけ寂しいけど、おばあちゃんとおじいちゃんがいてくれるから」
その度に私は、笑顔を貼り付けて返していた。