二十年目の同窓会
それは、高校の帰り道。
忘れもしない、五月の晴れた日で。
俺は切り出し方もわからずに、俯きながら唐突に口にした。
「あのさ、実は彼女、できたんだ
まだ舞衣にしか言ってないから」
…頼むから、おめでとうなんて言わないで。
俯いた顔を少し上げると、隣の舞衣は目をパチパチさせながら眉間に少しだけシワを寄せた。
そしてちょっと無言のあと。
「…え!そうなんだ、おめでとう!」
一番聞きたくなかった言葉を告げられる。
きっと笑顔で祝福してくれているから、また少し俯きながら「…どうも」と短く返した。
自分から彼女ができたと報告しながら、舞衣だけには「おめでとう」と言われたくなかった。
いっそ、「嫌だ」と泣いてくれたら「冗談だ」と言って抱きしめられたのに。
彼女ができたって、彼女に伝えて。
おめでとうって返されたら、脈なしだから私と付き合って。
遠野さんの言葉を思い出す。
舞衣と両思いなんかじゃなかった。
それなら遠野さんと付き合って、俺のことを好きだと言ってくれる人を好きになって。
舞衣のことは忘れよう。