あやかし戦記 愛ゆえの選択

「ケレトに行くのなら、その時は僕も一緒に連れて行ってね」

その後、着替えなど荷物が入った重いかばんを手に取り、多くの旅行客が行き来する港から離れる。ここから旅館まではバスで四十分ほどだ。

「レオナードだったら、「また乗るのかよ〜！！」って肩を落としてるな」

「ヴィンセント、レオナードの声にすごく似てるわよ！」

「レオナードくんって、移動が多いとそんな感じなの？見てみたいかも」

イヅナ、ヴィンセント、エイモンは笑顔で話しながら歩いていく。しかし、チターゼだけがかばんを手にしたままその場から動かないため、数歩歩いた三人は足を止め、振り返る。目が合ってもチターゼは動こうとしない。

「ここからは別行動ですよね。あたしと皆さんはこれから知り合いでも何でもありません。そんな人たちが一緒に旅館に行くなんて、おかしいですよね？」

チターゼはそう言い、もう話すことはないと言わんばかりに海を見つめる。その態度はどうかとイヅナが我慢できずに口を開こうとした時、エイモンに肩を掴まれた。