あやかし戦記 愛ゆえの選択

「ありがとうございます……。私は、当旅館を経営しておりますソン・ハオランです。こちらが娘のユエでございます。ユエは母を病気で亡くし、私も仕事がありますので、寂しい思いをさせてしまっています。なので、中庭でこうして遊んでしまうことがありまして……。申し訳ありません」

「いえ、気にしないでください。ユエちゃんはとっても可愛くて、着てる服も素敵で、お姫様みたいですね！」

「お姫様？嬉しい〜！」

イヅナの言葉にユエがハオランの腕の中で喜ぶ。刹那、激しく咳き込み始めた。笑顔は苦しげな表情に変わる。

「ユエちゃん？」

イヅナが驚くと、ハオランは冷静にユエの背中をさする。

「大丈夫だ、ユエ。お部屋に戻ろう。部屋に戻ったらお薬があるからな。……申し訳ありません。ユエは重い病気を患っていまして、興奮すると咳をしてしまうんです」

「そうだったんですか、すみません」

ハオランはユエを連れて中庭から出て行く。その間もユエは苦しそうだった。イヅナはあんなに小さな子が大病を抱えていることがショックで、拳を強く握り締めた。