あやかし戦記 愛ゆえの選択



乱暴に埃っぽい床に投げ飛ばされ、チターゼの体にまた痛みが走る。チターゼの腹には大きな傷ができ、そこから血が流れていた。

「ゲホッ!ゲホッ!」

咳き込むと、内臓が傷付いているのか血を吐き出してしまう。自分の体内から温かい血がなくなっていく感覚に、チターゼは恐怖を覚えながら視線を感じる方に目を向ける。

四体の妖がチターゼをニヤニヤしながら見ていた。マオ国の古い書物にも登場する恐ろしい妖にチターゼは襲われたのだ。その名は四凶。

「この女、あんなに腹から出血しているのにまだ死なないのか」

犬のような姿をしており、熊のような爪のない足をした渾沌があくびをしながら痛みに苦しむチターゼを見る。それを見て、残りの三体は笑った。

「まあいいじゃないか。生きている方が、反応があって痛め付け甲斐があるだろ?」

体は羊、曲がったツノ、虎の牙、人の爪と人の顔を持った饕餮がペロリと舌舐めずりをする。

「この女の血を舐めたが、なかなかうまかったぞ。やはり若い女はうまいな」

翼の生えた虎である窮奇がよだれを垂らす。チターゼの血がついた爪は綺麗に舐められており、テカっている。
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