悪魔な太陽くんと餌の私
「今晩は、月乃ちゃん。会いたかったよ」
今日は太陽くんの食事の日だ。
夢の中で会った太陽くんは、私をみてトロンと甘い笑みを浮かべる。
この甘い笑顔が演技なのだとしたら、私は太陽くんに男優賞を差し上げたい。
「お昼にも会ったじゃない」
「だからこそ余計にだよ。ご馳走を目の前に、ずっとお預けを食らってる気分。早く夢で逢いたくて仕方がなかった」
「お腹空いてるの?」
「空いてる。すごく空いてる。だから、早く食べさせて?」
そうやって強請る太陽くんが可愛くて、私は太陽くんに唇を重ねた。
私が唇を合わせると、太陽くんは待ちきれないとばかりに舌を差し入れて、私の口内を蹂躙する。
太陽くんに食べられているような、このキスがすごく好きだ。
「はぁ、美味しい。困ったな。なんだか、月乃ちゃんがどんどん美味しくなる気がする」
「精気の味って、変わるものなの?」
「知らないよ。でも、とにかく美味しいんだ。食べても、食べても、食べたりない」
太陽くんはそう言うと、再び私に唇を重ねた。
身体から力が抜けていくような感覚があって、少しだけ頭がくらりとする。
「月乃ちゃん、大丈夫?」
太陽くんの声が聞こえて、私はゆっくりと目を開いた。
どうやら、まだ夢の中らしい。
いつもは終わったらすぐに目が覚めるのに、珍しい。
「大丈夫。まだ、夢の中なんだね」
「うん。まぁ、明日は土曜日だし……」
土曜日なのが、何か関係あるのだろうか。
私が首を傾げると、太陽くんがちょっと視線を泳がせた。
「明日は学校が休みだから、会えないでしょ」
「え?」
不意打ちでそんなことを言われて、言葉に詰まる。
意味を理解して、顔が真っ赤になった。
「あ、あの、会えるかどうかは、食事には関係ないと思うよ?」
「うん、分かってる」
「それでも、会えないと……その、寂しいとかって思ってくれるの?」
私が尋ねると、太陽くんは困ったような顔で頷いた。
それって、太陽くんは意味を分かっているんだろうか。
「食事とか、そういうの全部関係なく、月乃ちゃんに会いたいんだ」