合わせ鏡の呪縛~転生して双子というカテゴリーから脱出したので、今度こそ幸せを目指します~
氷の美姫(八)
今ここで一人で待つよりは、居心地が悪いということはないだろう。
受付嬢に案内され、私たちは一番奥の部屋へ入る。
「これはこれは、殿下、今日はどういう御用でしょうか。こんな綺麗な方までお連れになって」
中にいたのは、50代くらいのがっちりした、短い黒髪にグレーの瞳の男性だった。
デスク越しのため上半身しか見えないが、おそらくキースよりも背が高いだろう。
腕の太さは私の太もも以上あり、筋肉が隆々としている。
いかにも冒険者だ、と思ってしまうのは、私が転生者だからだろうか。
「いや、少し確認したいことがあってな」
「殿下、うちはなーんにもやましいことも隠し事もないですよ」
ギルド長のその言い方には、ややトゲがある。
冒険の依頼料から数%とはいえ、お金を払うことになったのだ。
もしかしたらキースが敵と見なされてしまったのかもしれない。
私が提案したことなのに、なんだか申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
「いや、もちろんギルド長には絶大な信頼を置いているさ。確認したいのは、そんなことではなくて、魔物が食べられるかということなんだ」