合わせ鏡の呪縛~転生して双子というカテゴリーから脱出したので、今度こそ幸せを目指します~
怒り(三)
「やっぱり……。姉さまが権力に興味があるなんて、わたし知らなかったわ」
権力。それはキースのことを指しているのだと分かる。
キースのことなど、何にも知らないくせに……。
キースが王族だからという理由でそのひと括りにされたことに、無性に腹が立つ。
「殿下は、この国の雇用や貧困について考えられているのよ。それを権力だなんて。それに、私は仕事を探すために殿下を紹介していただいたと、この前もちゃんと言ったはずよ?」
「でも結局お姉さまは、玉の輿狙いなんでしょ」
「ミア、あなた」
「わたしより高い地位の方に見初められて、お姉さまはさぞ満足なことでしょうね」
怒りが、すっと降りてくる。
そういうことか。
自分の婚約者よりも高い地位の人間と私がくっつくのが、嫌なんだ。
私のことをいつまでも見下していたいから。
「ミア」
グレンのことを想っていないのなら、婚約など辞めてしまえばいいじゃない。
そう言いかけて、なんとか押しとどまる。
昼間にキースに言われたことを思い出したから。
もし仮にミアが私に憧れて嫉妬から言っているのだとしたら。
『褒めろ』って、キースにも言われたっけ。