合わせ鏡の呪縛~転生して双子というカテゴリーから脱出したので、今度こそ幸せを目指します~
魔物料理(五)
食堂の厨房はとても広い反面、やはり見たこともないような調理器具と食材が並べてあった。
中では一人の女性が魔物の肉を捌いている。
「ソフィア嬢、紹介するよ。この食堂を切り盛りしている女将で、妻でもあるアンジーだ」
アンジーと呼ばれた女性は小麦色の肌に長い栗色の髪を三つ編みにしている。
背もギルド長と変わらないくらい高く、スラっとしていて筋肉がしっかり付いている。
白いエプロンを付けていても戦士だと分かった。
「初めまして、アンジーさん。ソフィアです。今日はよろしくお願いします」
「こちらこそ、侯爵家の令嬢だって聞いていたから構えていたんだけど、ソフィアちゃんでいいかしら?」
「ええ、もちろんです。私、そんなに料理は得意というわけではないので、いろいろ教えて下さいね」
「おれはあいつらがこれ以上うるさくならないように抑えておくから、ちゃちゃっと作ってくれ」
そう言うと、ギルド長が冒険者たちの元へ戻って行った。楽しみにしているのに、待たせてしまうのもかわいそうなので、簡単にできるものから順番に出していく方がいいだろう。
「さて、まずは簡単にアヒージョから~」
私の掛け声に、ルカもアンジーさんもぽかんとしている。そうか、アヒージョなんで料理、こっちにはないんだっけ。元々、大して料理を作る派ではないから、基本的なものと自分の好きなものしか作れないのよね。