合わせ鏡の呪縛~転生して双子というカテゴリーから脱出したので、今度こそ幸せを目指します~

魔物料理(九)


「大変です、もうなくなりました」


 出て行ったばかりのルカが、空のお皿を抱えて帰ってくる。


「早すぎね」


 冒険者たちの食べるスピードがこんなにも早かったなんで、想定外だ。

 寸胴鍋の中はまだつみれを入れたばかりだから、すぐには出せない。

 そうなると先にアンジーさんの焼いている肉だ。


「アンジーさん焼けましたか?」

「ええ、これはお皿に盛っていいのかしら」

「はい。盛ってから味付けしますので、次を焼き始めて下さい」

「分かったわ」


 アンジーさんの焼いた肉に、別で作っておいた焦がしネギ油を乗せる。

 ジュっといういい音と、香ばしい匂いが広がっていく。


「肉はあと二皿ほどあるからケンカしないように言ってきてね」


 両手で抱えるほどの大きなお皿があと二つもあるのだから、これを食べる頃にはだいぶお腹が膨れるだろう。

 残りのコカトリス肉を焼きながら、つみれ汁の味見。

 野菜はすっかり柔らかくなっていて、つみれからも出汁が出ている。


「んー、これはこれで美味しいけど、みんなにはちょっと薄いかな」


 濃い味の物を二品出したので薄くてもいいのだが、みそとか醤油があればもっと美味しくなるのに。

 だけどそうなると、今度は米が食べたくなる。

 この世界にも米はあるのだろうか。

 恋しくなっても、どうしようもないというのに……。
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