合わせ鏡の呪縛~転生して双子というカテゴリーから脱出したので、今度こそ幸せを目指します~

現実(二)

 馬車の転倒で、全身打撲と診断を受けた私は、あの後熱が出て昨日まで寝込んでいたのだ。

 その間に、グレンから父への正式な面会の予約がなされたと聞いたのは昨日の夕方だった。

「この前、お嬢様のお見舞いにグレン様がお越し下さった時に、言っていたではないですか。お嬢様に、大事な話があると。きっと、グレン様はお嬢様に婚約を申し込むつもりに決まっています」

 私より1つ年下のルカは、目を輝かせ、手を前で組みながら私を見つめている。

 どうやら、その瞳には今目の前にいる私を通り越し、婚約式でもやっている姿が思い浮かんでいるのだろう。

 ルカは侯爵家の侍女長の娘であり、4年ほど前に見習い期間を経て私の専属侍女となった。

 年が近いせいもあり、部屋ではこうした砕けた会話も出来るようになった。

 妄想癖がやや強いものの、とても純粋で、こんな子が妹だったらと、何度か思ったことがある。

 ルカが夢見る私の結婚式も理想なら、私がルカを妹だったらというのも理想。

 ただおそらく二人とも、現実もそうなればいいと思っているのは事実だ。

「ふふふ、やだ、ルカったら」

「何を笑ってらっしゃるのですか」

「だって、それは絶対にないわ。私とグレンは、よく見積もっても友達でしょ。一緒にいて苦痛ではないのは確かだけど、今まで恋愛になんて発展しそうになったことは一度もなかったわよ。意見がぶつかり合って、言い争いになったことなら何度かあるけど」

「それは、お嬢様からしたらそうかもしれませんが、グレン様からしたら違うかもしれないではないですか。いつも側にいて、意見をし合い、いつしかかけがえのないものになっていた。みたいな?」

「そんなものかしら」
「そんなものです」
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