合わせ鏡の呪縛~転生して双子というカテゴリーから脱出したので、今度こそ幸せを目指します~

現実(三)

 確かに、仕事人間で普段家にあまり居付かない父に許可を取ってまでする話とはきっと重要なことだということは分かる。

「それに、仮にですよ。お嬢様はグレン様が婚約をミア様に申し込むなんて考えられます? ミア様とグレン様とではあまりに正反対すぎます。すり寄って来るようなご令嬢は、グレン様の好みではないのではないですか?」

「まあ、それもそうだけど」

 学園ではグレンの地位や身分だけを目当てに集まる令嬢たちに冷たい言葉や視線を返していたなとは思う。

 でも、ミアにはどうだろうか。

 元々、家族ぐるみの付き合いもあるため、あまり比較にもならない気はするが。

 私だって、グレンが嫌いだというわけではない。

 一緒にいて退屈ではないし、ある意味よく似ていると思う。

 全然知らない、気の合わない人と結婚させられるよりはたぶんマシ。

 いや、マシ以上にきっと楽だろう。

 今の生活と何が変わるわけでもなく、似たもの夫婦と言われるような穏やかな日が続くのだろうと、なんとなくは想像がつく。

 でもそれは恋とか、そういうモノとはほど遠いモノだろう。

「とにかく今日の主役はお嬢様なのですから、目一杯、着飾りましょうね」

「いつも通りでいいと思うのだけど。それに、まだ主役と決まったわけではないのだから」

「お嬢様はいつも地味な恰好ばかりですので、たまにはいいんです。奥様からも申し付かっておりますから」

「お母様からも?」
< 20 / 211 >

この作品をシェア

pagetop