合わせ鏡の呪縛~転生して双子というカテゴリーから脱出したので、今度こそ幸せを目指します~
6章

日常(一)

「いい天気だし、今日は楽しい買い物になりそうねー」

 馬車を一番に降りた母は、誰よりも張り切っていて、そして嬉しそうだった。

 なぜこんなことになったのか。
 
 ルカと二人で買い物へ行くはずだった私たちを、玄関で母が呼び止めたのだ。
 
 そこから質問攻めに合い、どこに何しに行くのか聞かれた挙句、自分も行きたいと言い出したのである。

 瑞葉の時とは違い、母との仲はさほど悪くはなかったものの、特段いいというわけでもない。

 瑞葉の頃の苦手意識が、どうしても家族を遠ざけていたようだ。

「……そうですね、お母様……」

「なに、その気のない返事は。せっかくいい天気なのだから、もっとシャキッとしないと」

「はははは、そうですね。頑張ります」

 変わろうという意識はあるものの、だからといって急にどうこうなる問題でもないのだが。

「ソフィアお嬢様、まずはどこに向かわれますか?」

「うーん、そうねぇ」

 ルカがいてくれるだけ、まだマシなのだろう。

 どこにと言われ、辺りを見渡した。

 大広場近くには、たくさんの露店が並んでいる。

 食欲をそそるような匂いのする店から、何か分からないような店までたくさんある。

 ますは硬貨の価値と、物価の知りたい私は、青果店を指さした。

「とりあえず、あそこを見てみたいんだけど」

「まぁ、おいしそうな果物屋さんね。さ、行ってみましょう」

 普通の侯爵夫人は、こんな露店で買い物などしないと思うのだが、母に気を使っていても始まらないので遠慮なく店に向かう。

 店には色とりどりの果物が並んでいた。

 見たことがあるものから、よく分からないまだら模様の果物まである。

 比較対象として何がいいかと考えていると、とてもよく見慣れた果物を見つけた。

「これが欲しいのだけど、いくらかしら?」

「お嬢さん、さすがだね。このリンゴは雪の中で保存していた、とてもおいしいリンゴだよ。今は時季ではないけど、味は保証するよ。一個、銅板2枚と銅貨3枚のところ、お嬢さんたちはとても綺麗だから銅貨2枚にまけてあげるよ」
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