合わせ鏡の呪縛~転生して双子というカテゴリーから脱出したので、今度こそ幸せを目指します~
主役(七)
「とにかくだ、外套を持っていきなさい、外套を。初夏といえ、夜は冷える。なんならそうだ、城の中でもずっと外套を着ていなさい」
「お父様、さすがにそれは」
「そうよ、あなた。城の中でまで外套を着ているなんて、聞いたことがないわ」
「いや、しかしだな」
「お父様、心配して下さったのですか? それなら私に変な虫が付かないように、お迎えに来て下さいます?」
私は父の腕に抱きつき、顔を見上げる。今までと全く違う私の行動に驚きながらも、父はまんざらでもないようだ。
「もちろんだ。仕事などすぐに終わらせて、迎えに行く。変な虫など付けさせるものか」
「仕事一筋のお父様を陥落させるなんて、さすがソフィアね」
「お父様、会場で待っていますからね」
約束を取り付けると、馬車に乗り込んだ。
あれだけ気が重かった夜会への参加が、嘘のようだ。
今なら、どんなことでも出来る気がする。
ルカが言ったように、今日だけは主役にもなれる気がしてきた。