合わせ鏡の呪縛~転生して双子というカテゴリーから脱出したので、今度こそ幸せを目指します~
再会(七)
ただ、父が口説いてくる男名前を覚えておけと言っていたなと、他事を考え出す。
ドレスが変わると、周りの態度はこんなにも違うものなのだろうか。公爵家のドレスの効果は、恐ろしいな。
「どうか、向こうで二人きりでお話出来ないだろうか」
「いや、どうかわたしと」
「あ、あの、えっと。私、人を待っておりまして」
「悪いが、わたしが彼女に先約を申し込んであるんだが?」
その一言に、皆が振り返る。そして声の主を確認すると、先ほどまでの人だかりがすっと退いていった。
「これは、王弟殿下におかれましては、ご機嫌麗しゅうございます」
まさか一番合いたくなかった人物に声をかけられるとは思ってもみなかった。
助かったとはいえ、次から次へと今日はなんて日なのだろう。
「覚えていてくれたなんて、光栄だな」
「まさか、この国で殿下を知らぬ者など、どこにおりますでしょうか」
もちろん前回は気付かなかったのだが、そこはスルーして欲しい。
殿下は、にこやかに私の手を取る。
こういうことが自然に出来てしまうあたりが、私からすると、チャラいと思えてしまう。
「今日はまた一段と美しい。氷の美姫と謳われるだけある」
「私、そのような二つ名で呼ばれたことはないのですが」
「それはまた、知らぬは本人だけということかな。ソフィア嬢、一曲踊っていただけますか