合わせ鏡の呪縛~転生して双子というカテゴリーから脱出したので、今度こそ幸せを目指します~
再会(八)
あー、断りたい。本気で嫌だ。
ダンスは元々得意ではないのだ。し
かし、前回の不敬罪の件もあり、これ以上印象を悪くするのは得策ではないことは分かる。
「私、あまりダンスは得意ではないのですが、それでもよろしければ」
私はしぶしぶ手を握り返す。周りの人がどこか落胆したようにも見える。
「光栄だ」
殿下に手を引かれ、広場の中央に出た。
端っこでいいのにと思いつつも、殿下と踊るという時点で端という選択肢はないのだろう。
ゆったりとした音楽から、やや早めのテンポの曲へ切り替わる。殿下に合わせ、必死に足を動かす。
「一つ聞いてもいいかい?」
余裕な殿下が声をかけてくる。
おそらく踊っていれば、二人の会話は他の人間には聞こえないだろう。
しかし、私はこのステップに付いていくのに必死だというのに、なんとも恨めしい。
「はい、殿下。私でよろしければ」
「君とグレンの関係は何だい?」
「グレン様ですか? 妹の婚約者ですが」
急に何を聞くのかと思えば、なぜここでグレンの質問が出てくるのだろう。
なにかを探るような殿下の顔。
グレン、何したんだろう。
しかしその真意が分からない以上、自分が思ってることを話すしかない。