合わせ鏡の呪縛~転生して双子というカテゴリーから脱出したので、今度こそ幸せを目指します~
婚約(五)
「そうですね、まず物価がとても高いです。屋台など、露店の物価はそれほどでもないのですが、土地単価が高いせいか、店舗を構える店の品物は総じて高く思えます。例えば、王都に憧れる若者がいたとして、どこかの街や村から出てきたとしても容易に定住することは難しいでしょう。また店舗と露店の格差からも分かるように、王都の貧富の格差はやや問題になりつつあります。貴族にとっては王城も近く、住みやすいのかもしれませんが、他の庶民にとっては中々住みにくい場所かと思われます」
「物価か、そういう視点の切り出しは今までなかったな」
「会議しているメンバーが、なんせ貴族ですからね」
グレンが書記のように、サラサラとペンを滑らせる。
「確かに、このまま貧富の差が開くのはまずいな」
王都といえ、貧富の差が広がればスラム化は避けられなくなる。
露天商たちが値上げを出来ないのも、そのためだ。
露店で買うのは、基本的には庶民だ。そして働いているのも庶民である。
そこが店舗のように値上げしてしまっては、彼らが食べていけなくなる。
しかし値上げなければしないで、彼らの暮らしは楽にはならない。
「例えばですが、王都に住まう貴族への税上げはどうですか?」
「それは無理だよ、ソフイア。会議のメンバーはみんな貴族さ。自分たちが払うものを、簡単に上げさせると思うかい?」
「それはそうだけど……。じゃ、そうね。贅沢税じゃないけど、貴族が出入りする店舗の商品に課税をかけるのはどう?」