合わせ鏡の呪縛~転生して双子というカテゴリーから脱出したので、今度こそ幸せを目指します~
11章
父娘(一)
「殿下、ブレイアム侯爵がお見えになっております」
渡りに船とはこのことで、約束をしていた父がタイミングよく迎えに来てくれたようだ。
この空間から逃げ出せるというだけで、少しほっとし、私は立ち上がる。
「そうか、通してくれ。挨拶がしたい」
「かしこまりました」
挨拶? 挨拶とはなんだろう。
おはようございますとか、こんばんわというような挨拶ではないことだけは分かる。
そうなると、残る挨拶とは。
「結構です。挨拶など必要ありません」
「そういう訳にもいかないだろう。何せ俺は明日からソフィアに求婚をしようと……」
「ですから、それがダメだというんです」
父が部屋に入って来たことにあせり、思わず両手でキースの口を塞ぐ。
その姿を見た父が、大いに眉を顰める。あ、不敬罪……。
「何をしているんだ、ソフィア」
「えっと、これは、その……」
諦めて手を放そうとした時、キースが抑えていた手にキスをする。
「みゃー」
慌てて手を放し、両手を上げる。もう手まで赤い。
まさかこんな風にいたずらをしてくるような人だなんて思ってもみなかった。