合わせ鏡の呪縛~転生して双子というカテゴリーから脱出したので、今度こそ幸せを目指します~
15章
氷の美姫(一)
暖かなというより、やや汗ばむような強い日差しが降り注いでいる。
しかし本格的な夏とは違い、吹き抜ける風は涼しい。
街の中心部の裏手にて馬車を降りると、この前来た露天の方へキースと共に歩き出す。
キースは勝手知ったるというように、前に母たちとリンゴを買った露天の並ぶ広場へ。
この前より時間が遅いせいか、広場には何かを焼く香ばしい匂いや、その場で食べられる軽食を取り扱う店が多く思える。
「ソフィアは、嫌いなものはある?」
「いいえ、特にはないです」
食べたことも見たこともないそれらが並ぶさまは、まるでお祭りのようだ。
お祭りなんて、前の時でもあまり行ったことがなかった気がする。
一人でお祭りを回っているのを見られたくなくて、ホントはみんなみたいに屋台を回って楽しみたかったのに、どうしても行けなかった。
他人の目なんて気にすることなどなかったのに。
本当に、考えれば考えるほど、私はもったいない人生を送ってきたのだなと実感する。
「じゃ、適当に買ってくるよ」
そう言うと、串焼きにサンドイッチのようなものをテキパキとキースが買いに行く。
両手いっぱいに荷物を持つ姿に、慌てて駆け寄る。
するとキースに瓶に入ったサイダーのようなものを持たされた。