廃屋の捨てられ姫は、敵国のワケあり公爵家で予想外に愛されています
足を動かせなかった一ヶ月、午前中はずっとダリオンと軍事戦略についての勉強をし、午後はおばあ様と読書をして過ごした。
ダリオンは演習や訓練、どうしても出なければいけない用事以外は書斎で仕事をし、食事は必ずみんなで取った。
おばあ様との仲も前のような冷戦ではなく、愛のこもった皮肉みたいで私も楽しく見ていられる。
一体何がどうなったのか、さっぱりわからないけど、蟠りが無くなったのはいいことだ。

また、幸せな日々の中で、おかしな出来事もあった。
一つは、エスカーダ邸にお見舞いの品が続々と届いたこと。
レストラン「エルハングル」からは焼き菓子の詰め合わせ、洋装店「ソハラルージュ」からは高級生地が山のように。
また、陶器職人組合から最高級のティーセット、人形職人組合からは可愛らしいドールが届いた。
「エルハングル」と「ソハラルージュ」はまだわかる。
でも陶器職人組合や人形職人組合にはいくら考えてみても知り合いはいない。
それなのに、お見舞いが届く理由がわからず混乱していた。
しかしある日、その謎は綺麗に解けたのである。
往診のトマスに同行してきたセドリックが、私に教えてくれたのだ。
お見舞いを送ってくれたのは、療養所を無事退院した人たちで、私のケガを知り、人形劇のお礼を兼ねて送ってくれたらしい。
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