廃屋の捨てられ姫は、敵国のワケあり公爵家で予想外に愛されています
あら?
それにしても、セドリックはどうしてこんなに情報通なの?

「セドリック様、どうしてそんなに詳しいのですか?」

「えっ!?あー……最近良く王宮に出入りするので、そこでみんなが話してるのを聞いたのです」

セドリックは国一番の薬学博士だ。
王宮に薬を調合しに行ったり、薬湯を作りに行くこともある、と言っていたわね。

「そうなのですね!みなさん噂話が好きなのかしら?」

「ええ、噂にはことかかない場所ですよ……あっ、そうだ、忘れてた!」

セドリックは、胸ポケットから折り畳んだ紙を取り出した。

「それ、何ですか?」

「演劇のチラシですよ!今度、ルミナリエスに東の国アルカディアから劇団が来るらしいのです!」

「劇団!?まぁ、素敵!おばあ様が聞いたら飛び上がって喜びそう」

ルミナリエスに戻ってきて、目も治ったのに、私のケガのせいでどこにも出掛けられないでいた。
もうすぐ、ケガも完治することだし、是非、おばあ様と観劇したいわね!
私の顔が綻ぶのを見て、セドリックも楽しそうに笑った。

「カトレア様も喜ぶでしょうね!」

「ええ!あ、そうだわ!よろしければ、セドリック様も一緒に行きませんか?みんなで見た方が楽しいに決まってるもの!私、おばあ様に頼んでみます!」

「い、いいえ、そんな…… お気持ちだけで……」

セドリックは両手を振りながら、遠慮した。

「大丈夫!行きましょう!一緒にっ!」

私の押しの強さに、彼は諦めたように頷いた。
東の国の劇団かぁ、一体どんなお芝居をするのだろう。
私の心はもう、演劇のことでいっぱいになっていた。
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