廃屋の捨てられ姫は、敵国のワケあり公爵家で予想外に愛されています
私たち三人を乗せた馬車は、劇場のあるルミナリエス商業区のローワン街に差し掛かった。
円形の大ホールは、演劇のみならずサーカスなども開催される、ルミナリエスのシンボルだ。
馬車を正面に止めて降りると、入り口脇で待っているセドリックが見えた。

「セドリック様、お待たせしましたか?」

「いいえ、僕も少し前に来たのですよ」

そう言って笑うと、セドリックは私の後ろに視線を向け、恭しく頭を下げた。

「本日はご一緒させて頂き、ありがとうございます」

「いいのよ。あなたもかなりの芝居好きだものね。今日は一緒に楽しみましょう」

おばあ様はにっこりと微笑んだ。
でも、相変わらずダリオンは無言&無表情。
そんな大英雄を、セドリックは不思議そうな顔でじっと見上げた。
あっ、これはヤバイかも……と、思ってすぐ、ダリオンが言った。

「私の顔に何かついているか?」

「えっ!あっ、申し訳ありません!」

セドリックはビクッと震えて一歩下がった。
慣れない人間(特に子ども)に、基本、大英雄は塩対応である。
多少噂で聞いていても、これほどまでに人嫌いを拗らせているなんて、セドリックは知らないはずだ。
ここは上手く話題を変えなくては。
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