廃屋の捨てられ姫は、敵国のワケあり公爵家で予想外に愛されています
「この商売も最近はなかなか儲けがなくてな。貴重価値のある人間はそうはいない。シエナが一番高く売れたが、出産した途端力を失くしてな。当時、フェルナンシア王にだいぶ文句を言われたが、まぁ何の因果か、お前に引き継がれていたのは僥倖。これで、また大儲け出来る」

老人の言葉に、頭を殴られたような衝撃を受けた。
フェルナンシア王は、拐われて来たお母様を金で買い、不思議な力を手に入れるために側室にした。
つまり、フェルナンシア王家は奴隷商人と深い繋がりがある。
そして、偶然だと思っていた奇跡の数々は、間違いなく私の起こしたものだと判明したのだ。
非情な真実を知り愕然とする私のほうに、老人はゆっくりと歩いて来た。
舐めるような視線に、肌が粟立つ。
すると、ローリーが老人と私の間に体を滑り込ませた。

「無礼者!ルキア様に近づくことは許しませんっ!奴隷商人などが触れていい方ではありませんよ!ルキア様は大英雄ダリオン・エスカーダ様の婚約者なのですから!」

「ああ、知っている。大英雄の婚約者になり、女神の奇跡を発現させた赤い髪の子供。巷でかなりの噂になっておったろう?そのお陰で、ワシら奴隷商人が簡単に発見出来たのだ。礼を言いたいくらいだ」

老人は冷ややかに笑う。
その様子はローリーの神経を逆撫でした。

「礼ですって?馬鹿にするのも大概になさい!軍の兵士にこのことを話します!ダリオン様が知れば、お前などすぐに処分して下さるわ!さぁ、ルキア様、帰りましょう!」
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