廃屋の捨てられ姫は、敵国のワケあり公爵家で予想外に愛されています
お父様とエレナ。
二人の頷き合う様子には信頼が見えた。
影のように付き従い、私の側を決して離れないエレナに、お父様は全幅の信頼を置いている。
それに、二人にはどこか似ている部分もある。
静かな中に燃えるような情熱を秘めていて、普段は優しいのだけど、怒らせたら鬼より怖い。
なにがあっても、この二人だけは敵に回したくないと心底思っている。

そうこうするうちに、部屋に侍従がやって来て、祝祭の開始準備が出来たと告げた。
私とお父様はアルカディア王宮大広間へと向かい、民が待つバルコニーに出て、祝祭の開始を宣言した。
すると、民が口々にお祝いを言ってくれる。
「ルキア姫ー!誕生日おめでとう!」
「赤髪の巫女姫様、万歳!」
などと、周囲に地響きが起こるほどの大歓声が。
フェルナンシアで蔑まれていた赤い髪。
それは、このアルカディアでは神に次ぐ信仰の対象である。
私はアルカディアで、女神ローディアや赤い髪の巫女についての伝承を学んだ。
女神ローディアに祝福された者であり、奇跡を起こせるただ一人の存在。
だからこそ、その力を人々の未来のために使わなくてはならない。
その決意を、亡きお母様の墓標に誓ったのである。

「ほら、もっと高い場所で手を振っておあげ。皆に見えるように」

お父様はふわりと私を抱き上げた。
すると、視界がぐんと開け、アルカディア中央広場に押し寄せた一人一人の顔がハッキリと見えた。

「笑顔の花が咲いているようだわ……」

呟いた私は、千切れるくらい手を振り、喉が枯れるほど御礼を言った。
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