廃屋の捨てられ姫は、敵国のワケあり公爵家で予想外に愛されています
感動的な開会宣言が終わると、次は大広間で各国の使者への御披露目である。
お父様とともに玉座に向かい、用意された席に座ると、正面の扉が開き、各国の使者が続々と入場して来た。
大国アルカディアの式典だけに、使者の数も多く、見たこともない民族衣装の人がたくさんいた。
使者は予め決められていた順番に並び、次々とお父様と私にお祝いの言葉を述べる。
そして、お披露目もだんだんと終わりに近づき、使者の数も残り一国となった時。
私の目に、信じられない光景が飛び込んで来た。

最後の使者は、戦場でもないのに黒いプレートアーマーを着込んでいた。
頭から足先まで漆黒。
それは間違いなく、大英雄ダリオン・エスカーダである。
でも、どうしてダリオンが?
それに、なんで鎧なの!?
嬉しい反面、疑問だらけの私の前では、地獄の使者のように恐ろしい彼の出で立ちを見て、各国の使者がざわざわとしている。

「やれやれ。なんで祝いの場で黒い鎧なのだ。戦いに来たのか?しかもご丁寧に兜付きとは」

お父様は肩を竦めた。
ダリオンは周りの反応など気にも止めず、ズンズンと遠慮無く歩いて来る。
衛兵が走り寄ろうとするのを、お父様が片手で止めるなか、私は……無意識に叫んでいた。

「ダリオン様!?」

ダリオンは私の方に一度顔を向けると、すぐにお父様に向き直った。
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